出産後5か月の31歳女性で、右手首の小指側に強い痛みを訴えて来院されたケースです。
来院時のお悩み

症例概要
- 主な訴え
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肩こり・右手首小指側の痛み
- 年齢・性別
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31才・女性・産後5ヶ月
- 医療機関での診断
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TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)
- 症状が気になる場面
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抱っこ、家事など手首を使う動作
- 既往歴
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学生時代のテニスで同じ右手首を痛めた経験あり
この患者さんが最初に受診した医療機関では、手首の小指側にあるTFCC(三角線維軟骨複合体)の損傷と説明を受けていました。学生時代にテニス部で同じ右手首を痛めたことがあり、産後の育児や家事で手首を使う機会が増えるなかで、再び痛みが強くなっていました。
産後はホルモンの影響で関節が緩くなり、TFCC損傷が悪化した可能性があるものの、手首の痛みにはTFCCだけでなく、前腕の筋肉や腱、その他の手関節周辺組織などが関係することもあります。
KAWAEカイロプラクティックでは、医療機関での診断内容を参考にしながら、どの動作で痛むのか、手首のどの場所に症状があるのか、前腕や肘を含めた上肢の状態などを確認し、どの施術が適しているか考慮しながら施術を進めました。
この記事では、初回来院時に確認したこと、施術内容、その後の右手首の症状の経過についてご紹介します。
来院までの経緯
患者さんは31歳の女性で、来院時は産後5か月でした。出産後しばらくしてから右手首の小指側に痛みを感じるようになり、徐々に症状が強くなっていました。最近では手首だけでなく、肘にも響くような痛みもあるそうです。
学生時代はテニス部に所属しており、約10年前にも今回と同じ右手首の小指側を何度か痛めた経験がありました。当時は湿布やテーピングを使用し、練習を休むなどして対応していました。その後は大過なく、妊娠中にも手首の症状は特に気になっていませんでした。
出産後は、赤ちゃんの抱っこや家事などで手首を使う機会が増え、痛みが次第に強くなりました。育児中のため手首を十分に休ませることが難しく、手首用サポーターを装着すると楽になるものの、抱っこや家事のたびに脱着する必要が度々あり、継続使用がも難しい状況でした。
当初は腱鞘炎ではないかと考えて医療機関を受診しました。X線検査では骨に明らかな異常は指摘されず、TFCC(三角線維軟骨複合体)の損傷と説明を受け、手首の使用をできるだけ控えるよう指導されていました。
しかし育児や家事の負担から利き腕の手首を休ませることは難しく、日常生活への支障も大きくなっていました。学生時代にカイロプラクティックを受けた経験があったことから、今回の手首の症状についても相談したいとのことで当院へ来院されました。
初回来院時の状態
初回来院時、患者さんが最も気にしていたのは右手首の小指側にある強い痛みでした。
特に、手のひらを机につくような動作では強い痛みが出ており、痛みの度合いを10段階で評価してもらうと10/10でした。痛みのため右手首を積極的に使うことができず、利き腕をうまく使えないことが大きな負担になっていました。
首から手に広がる神経症状はなし
当院では、まず手首や腕の症状が頸椎の問題と関係していないか確認しました。
頸椎の可動域には大きな制限はなく、首から腕・手に広がる痛みやしびれはありませんでした。
また、上肢の腱反射(C5・C6・C7)にも明らかな異常はみられず、肘周辺で尺骨神経を軽く叩いてチェックするティネルサインも陰性でした。
よって、頚椎に原因がある神経症状は特に無いと判断しました。
肩や肩甲骨周辺の筋肉の緊張
肩関節の可動域をみると、腕を後ろへ回す動作に軽い制限がありました。
また、肩甲骨周辺、特に棘下筋には強い緊張と圧痛があり、その部位を刺激すると上腕方向へ痛みが広がりました。ただし、手首の痛みそのものが再現されるわけではありませんでした。
そのため、肩甲骨周辺のコリと痛みは右上肢全体の状態を考えるうえで参考にしつつ、手首の痛みとは分けて判断する必要があります。
前腕への刺激で手首方向へ症状が再現
右肘から手首側へ数cm下がった前腕部に、強い圧痛を示す部位がありました。
そこを親指の腹で圧迫すると、患者さんが普段感じているものに似たジンジンとした感覚が手首方向へ広がりました。
この所見から、医療機関で診断されていたTFCC損傷だけでなく、前腕の筋肉や軟部組織も現在の症状に関係している可能性が高いと考えました。
ただし、前腕への刺激で症状が再現されたことだけで、「TFCC損傷ではなかった」「前腕の筋肉が痛みの原因だった」と判断することはできません。
TFCC損傷の診断を尊重しながら、上肢全体を確認
初回来院時に分かったこと:
右手首小指側の強い痛み
手のひらをつく動作での強い症状
医療機関でのTFCC損傷という診断
前腕への刺激による手首方向への症状の再現
肩・肩甲骨周辺の筋肉の緊張
そして、頚椎から腕や手へ広がる神経症状や明らかな腱反射の異常はありませんでした。
そのため、TFCC損傷そのものをカイロプラクティックで治療するという考え方ではなく、医療機関での診断を踏まえながら、前腕・肩・肩甲帯なども含めて現在の症状に関連している可能性のある部位を確認しながら施術を行なうことにしました。
KAWAEカイロプラクティックで行った施術
前腕の筋肉・軟部組織への施術
患者さんの前腕部外側に強い圧痛があり、そこを圧迫すると 手首方向へジンジンとした症状が広がるため、症状を強く誘発しない範囲内で筋肉や軟部組織をほぐすトリガーポイントセラピーを行いました。
これは「前腕の固い筋肉のコリをほぐせばTFCC損傷が治る」という意味ではありません。
前腕の筋肉や腱は手首や指の動きに関係するため、育児や家事による反復動作で負担が蓄積している可能性を考え、施術を手首周辺だけに限定せず対応しました。
肩・肩甲帯へのアプローチ
右肩には軽度の可動域制限があり、肩甲骨、特に棘下筋には強い緊張と圧痛がみられます。
そのため、肩関節や肩甲骨周辺にはモビライゼーションテクニックを行い、肩・肩甲帯の動きを確認しながら施術しました。
状態に応じて頸椎・胸椎へのアジャストメント
初回には、頸椎C5、胸椎T4・T7などへアジャストメントを行っています。
ただし、この施術は、
「頸椎のゆがみが手首痛の原因である」
「背骨を矯正すればTFCC損傷が治る」
という目的でおこなったものではありません。
首から手に広がる神経症状はありませんでしたが、上肢全体の動きや肩甲帯・胸椎の状態も含めて確認し、必要に応じて施術部位を選択しました。
手首を強く刺激しないストレッチを指導
右手首は動かすことへの不安が強かったため、手首そのものへ強いストレッチを加えるのではなく、手首の痛みを強く誘発しない範囲で前腕の筋肉を伸ばす方法をお伝えしました。
育児中は手首を完全に休ませることが難しいため、「できるだけ使わない」という指導だけでは現実的ではありません。
そのため、
- 抱っこの際に手首を強く反らしすぎない
- 手首だけで赤ちゃんの体重を支え続けない
- 痛みが強くなる動作ではサポーターも活用する
など、日常生活での負担を調整することも重要です。
症状の変化を確認しながら施術内容を調整
初回施術後には本人が大きな変化を感じ、3日後の2回目には、手首の尺屈・掌屈で痛みは残るものの、痛みの強さは1~2/10程度まで軽くなっていました。TFCC周辺を押した際の圧痛は残っていました。
ただし、症状が短期間で軽くなったことだけで「TFCC損傷が軽かった」「施術でTFCCが治った」と判断することはできません。
そのため、症状の強さだけでなく、どの動作で痛みが残っているか、育児や家事のあとに再び強くならないかなどを確認しながら、その後の施術間隔や内容を調整しました。
当院での施術方針をまとめると、「医療機関によるTFCC損傷という診断を尊重しながら、手首そのものへ強い刺激を加えるのではなく、前腕・肩・肩甲帯・頸胸椎を含めた上肢全体を保存的に施術した」という形になります。
この症例から考えられること
この症例では、医療機関でTFCC(三角線維軟骨複合体)損傷と診断されており、初回来院時には右手首の小指側に強い痛みがありました。
一方で、前腕のトリガーポイントを圧迫してみると手首方向へ痛みが広がる反応もみられ、肩・肩甲帯にも筋肉の緊張や動きの制限が確認されました。
そのため、「TFCC損傷だけが現在の痛みのすべてを説明している」と決めつけず、手首から前腕、肩まで含めて考える必要がある症例でした。
TFCC損傷という診断と、現在感じている痛みは分けて考える必要がある
TFCCは、手首の小指側で安定性や力の伝達に関係する組織です。
使いすぎや衝撃によってこの部位を損傷すると、
- 手をつく
- 手首を小指側へ動かす
- 重たい物を持って手首を曲げる
- 物を握る
- 手首へ体重をかける
といった動作で痛みが強くなります。
この患者さんも手のひらをつく動作で強い痛みがあり、医療機関でのTFCC損傷という診断と一致する部分がありました。
ただし、TFCCに損傷があることと、現在感じている痛みのすべてがその損傷だけから生じていることは同じではありません。
首肩周りから前腕にかけての筋肉のコリなどが症状に加わっている可能性も考える必要があります。
痛みが短期間で軽くなったものの、TFCCが短期間で修復されることはあまりない
この症例では、初回来院時に10/10程度だった痛みが、3日後には1~2/10程度まで軽くなっていました。
しかし、この変化から、
「TFCC損傷が3日で治った」
「施術によって軟骨や靱帯が修復された」
と判断することはできません。
実際、2回目の来院時にもTFCC周辺の圧痛は残っていました。
痛みの強さは、損傷組織そのものの状態だけでなく、周囲の筋肉や腱への負荷、日常での使用量、痛みに対する感受性などによっても変化します。
したがって、症状の改善と組織の治癒は分けて考える必要があります。
産後だからTFCC損傷が起きたとは断定できない
この記事の旧バージョンでは、産後の関節のゆるみが以前の手首の傷を悪化させた可能性を強く説明していました。
しかし、この方は学生時代に同じ右手首を痛めた既往歴があり、さらに産後は、
- 抱っこ
- 赤ちゃんを持ち上げる
- 授乳時の支え
- 家事
- 手首を反らした状態で体重を支える
など、手首を繰り返し使う機会が増えていました。
そのため、「産後だから関節がゆるんでTFCCを損傷した」と一つの原因に結びつけるのではなく、過去の既往や育児による反復負荷など複数の要素を考える方が適切です。
育児中は「手首を使わない」という対応が難しい場合がある
TFCC損傷などの手首の痛みでは、負担を減らすことが重要になります。
しかし、産後の育児では赤ちゃんを抱いたり支えたりする必要があり、完全に手首を休ませることは現実的に難しいですね。
この方も、サポーターを使用すると楽になるものの、育児や食器洗いなど家事の度に着け外しが必要で、常時固定することは困難でした。
そのため、
- 手首だけで赤ちゃんの体重を支えない
- 前腕や身体全体を使って支える
- 強く痛む動作をできる範囲で減らす
- 必要な場面ではサポーターを利用する
など、実際の生活に合わせた負担の調整も重要になります。
手首だけでなく、前腕や肩を含めて確認する必要
この症例では、前腕の圧痛部位を刺激すると手首方向へ症状が広がる反応がみられました。
また、肩・肩甲骨周辺にも緊張や動きの制限が確認されています。
これらの所見から、手首だけを局所的にみるのではなく、手首を動かす筋肉がある前腕や、その上に続く肘・肩まで含めて確認することには意味があります。
ただし、「前腕を施術したらTFCC損傷が治った」という意味ではありません。
手首周辺に加わる負荷を考えるうえで、上肢全体の使い方を確認することが重要ということです。
症状が軽くなっても、急に負荷を戻さないことが重要
痛みが急に軽くなると、「もう治った」と考えて以前と同じように手首を使いたくなることがあります。
しかし、組織の回復と自覚症状の変化は必ずしも同じ速度では進みません。
TFCC損傷など、軟骨や靭帯のダメージが確認されている場合は、一時的に痛みが軽くなっても損傷そのものが完全に治癒するためには時間がかかるため、
手をついて体重をかける、重いものを持ってひねる、強く手首を反らす
といった負荷を急に増やさず、症状を確認しながら段階的に戻していくことが大切です。
この症例から分かること
この症例で重要なのは、「TFCC損傷と診断されたから手首だけをみる」「産後だから関節がゆるんだことが原因」と単純化しないことです。
医療機関での診断を尊重しながら、
- どの動作で症状が出るのか
- 前腕や肩に関連する所見がないか
- 育児や家事でどのような負荷が加わっているか
- 痛みが改善しても圧痛や動作時痛が残っていないか
などを合わせて確認し、症状の変化に応じて負担のかけ方を調整していくことが大切です。
また、今回みられた短期間での痛みの軽減を、TFCCそのものの治癒やカイロプラクティックだけの効果と断定することはできません。 自然経過、一時的な負荷の減少、サポーターの使用、セルフケア(マッサージやストレッチ)など複数の要素を含めて経過を考える必要があります。
産後の手首の痛みでお悩みの方へ
産後は、赤ちゃんの抱っこや授乳、着替え、入浴、家事などで手首を繰り返し使う機会が急に増えます。
そのため、手首の親指側や小指側、前腕などに痛みが出ることがあります。ただし、「産後だから関節がゆるんだ」「骨盤やホルモンの影響だけで手首が痛くなった」と、何か一つの原因に決めつけることはできません。
手首の痛みには、
- TFCC損傷
- 腱鞘炎
- 前腕の筋肉や腱の痛み
- 肘や手首周辺の末梢神経
- 過去のけが
- 抱っこや家事による反復動作
など、さまざまな要素が関係します。
KAWAEカイロプラクティックでは、
- どこに痛みがあるのか
- どの動作で症状が強くなるのか
- 手首に体重をかけると痛むか
- 抱っこや授乳でどのように手首を使っているか
- 前腕や肘、肩に関連する他の症状がないか
- 医療機関でどのような診断や説明を受けているか
といった事を確認し、カイロプラクティックによる施術が適している状態かどうかを判断します。
当院では、TFCCや腱などの損傷組織そのものを「元に戻す」「修復する」ことを目的に施術するわけではありません。
必要に応じて前腕、肘、肩、肩甲帯なども確認し、症状を強く誘発しない範囲で軟部組織への施術やモビライゼーション、アジャストメント、日常生活での負荷の調整などを行います。
また、産後の育児においては「手首を完全に使わない」ことが難しいため、抱っこや家事の仕方を少し工夫し、痛みが強くなる動作をできる範囲で減らすことも重要です。
一方で、
強い腫れや変形がある、外傷後から急に痛くなった、手に力が入らない、感覚が鈍い、痛みが急速に悪化している
といった場合では、カイロプラクティックよりも整形外科など医療機関への受診を優先します。
「ケガをしたわけではないけど産後から手首が痛くなった」「TFCC損傷や腱鞘炎と言われたが、育児中で手首を休ませにくい」「手首だけでなく前腕や肩もつらい」といった場合は、ご相談ください。
現在の症状と日常生活での負担を確認したうえで、当院で対応できる状態か、医療機関での評価を優先した方がよい状態かをご案内します。

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