起立性調節障害・直立性不耐症候群について

起立性調節障害について

自律神経の乱れが引き起こす身体の不調

朝起きられない、めまいや立ちくらみがする、身体がだるくてしょうがない、動悸や息切れがする、頭痛がして学校へ遅刻したり欠席を繰り返してしまう、そんな子供たちを最近よく目にします。一般的には単に怠けているだけのように見えてしまう症状ですが、しっかり検査をしてみると実は「起立性調節障害」だったことが判明することが増えています。

2007年頃からようやく全国の医療機関で起立性調節障害の診断が下せるようになり、現在ではガイドラインが策定されて治療方針が標準化されてきているようです。ちなみに日本では起立性調節障害 (Orthostatic Dysregulation)と呼ばれていますが、米国などではOrthostatic Intolerance(起立不耐症・直立性不耐症)と呼ばれています。論文を読み比べていると名称が統一されていないように見えてしまいますが、同一のものです。

血管や心臓の働きがうまくいかず、脳への血流低下をもたらす

起立性調節障害は自律神経系の異常で、特に循環器系の調節がうまくいかないため、立ち上がった時に血圧が急に下がったり脈が早くなりすぎて調節に時間がかかってしまいます。通常であれば立ち上がった時に脚の血管をキュッと締めて自動的に血圧を調整できますが、起立性調節障害の子供はうまくゆかず、脳への血流が減ってしまって立ちくらみや気分の悪さを感じてしまうのです。

起立性調節障害にはどんな症状があるのでしょう?

下記の症状がよく見られます。

  • 立ちくらみやめまいを起こしやすい
  • 立ち上がった時に気分が悪くなったり、失神して倒れることもある
  • 入浴時、あるいは嫌なことがあると気分が悪くなる
  • 動くと動悸や息切れがする
  • 朝になかなか起きられず午前中は気分が悪い
  • 顔色が悪く青白い
  • 食欲がない
  • 強い腹痛を訴えることがある
  • 身体がだるくて疲れやすい
  • 頭痛がある
  • 乗り物酔いしやすい

これら11項目のうち、3つ以上に当てはまるか、2つであっても症状の度合いが強ければ起立性調節障害の可能性が高いでしょう。

自律神経を整えることで起立性調節障害の改善を目指す

小児科やそこから紹介された総合病院などで起立性調節障害の診断を下され、病院で治療を受けていてもかまいません。カウンセリングや生活習慣についての指導からなる病院での治療と並行して、背骨のゆがみを整えることで自律神経のバランスを整えることができます。血圧や脈拍のコントロールは自律神経によって自動的になされていて、通常は交感神経と副交感神経がバランスよく働いてくれているのですが、背骨、特に頚椎や胸椎にゆがみがあると交感神経と副交感神経のどちらかもしくは両方が刺激を受けすぎてバランスが崩れてしまうことがあります。

当院で起立性調節障害の患者さんをみる時は、頚椎と上部胸椎のゆがみをチェックします。特に上の方の頚椎のゆがみが強いと副交感神経が刺激を受けてしまいますし、頭痛も起こりやすいですね。そして肩甲骨の間の上の方にある第1~第4胸椎には心臓の働きをコントロールする交感神経が存在します。この上の方の胸椎のゆがみが強いと交感神経が刺激されすぎて、脈が早くなりすぎたり血圧が上がりすぎるといった症状が発生しやすくなります。

この辺は患者さんの訴える症状と、交感神経系・副交感神経系どちらの症状が強いのかを観察しながら背骨の歪みを調節してゆきます。