まずは骨盤の前傾と後傾について知っておきましょう
脚の長さの違い(脚長差といいます)が観察できる場合、通常は骨盤のねじれのゆがみが確認できます。骨盤がねじれる際は下図で赤く表示されている「寛骨」が前に傾いたり後ろに傾いたりします。この動き自体は歩いたり走ったりする時にも起こる自然な動きで、脚が前に出る時は寛骨が後傾し、脚を後ろに蹴り出すときは寛骨が前傾します。
脚を組む時も、例えば右脚をうえにして脚を組むと右の寛骨が後傾します。いつも右脚を上にしないと脚を組めない人は骨盤のねじれのゆがみ(右の寛骨が後傾したまま)がありますね。
骨盤がねじれている場合、例えば骨盤の左が後傾で右が前傾になっています。歩くときも走るときも骨盤はそのようにねじれて動くのですが、特に仙腸関節の動きが悪くなってフィクセーションを起こしていると前傾か後傾のどちらかになったまま固まっています。下図の青丸で示している上後腸骨棘(PSIS)を触診の基準にしてチェックすると、後傾した側の寛骨はPSISが出っ張ってすごく目立ちます。
骨盤のねじれと脚の長さの違いについて解説
下図では骨盤の左側(左の寛骨)が後傾、右の寛骨が前傾しています。
脚の長さの違いをチェックするためには、被験者がうつ伏せ、もしくは仰向けになってもらう必要があります。実際には仙腸関節のチェックをすることも考えるとうつ伏せの方がいいですね。
両脚をできるだけ揃えて、左右に曲げたままにならないようにして内くるぶしやかかとの底面を基準にして左右の脚の長さを比べます。脚自体の回旋の影響もできるだけ最小限になるよう調整します。
図2のように左の寛骨が後傾している場合、左の上後腸骨棘(PSIS)が右側と比べて後ろに突出しているのが確認できます。そうすると図1の様に、斜め前下にある股関節が上に引っ張り上げられるんですね。股関節の位置が上に上がるとそちら側の脚が短く見えます。大腿骨やスネの骨が短くなったわけではありません。あくまで見た目上の脚の長さです。当院の患者さんでは、骨盤のねじれがある場合、平均で0.5~1.0cm程度の脚長差が見られます。
うつ伏せで脚の長さの違いが見られるからといって、立った時も骨盤が同じ状態のままであるとは考えないでください。なぜなら立位では脚が短くなっている方に骨盤が傾くからです。図2の状態の骨盤をうつ伏せで触診すると、左の股関節が上がっていますが、立位でチェックすると左の股関節が下がります。何度も繰り返しますが、立位では脚が短くなっている方に骨盤が傾きます。
トップの図の様に、骨盤が左に傾くとその影響は腰椎にも現れますし、膝の痛みとして現れるかもしれません。腰椎が右に曲がるということは、右の腰の筋肉に余計な力が入っている状態であり、腰痛の原因となります。もし左の仙腸関節だけが固くなっている場合、右の腰が痛いのに原因は左の骨盤にあるということになります。
骨盤のゆがみのパターンと骨盤矯正
当院で骨盤を矯正する時は、このような骨盤のゆがみのパターンがあります。骨盤の前傾・後傾の他、INやEXで表す水平方向のゆがみもありますが、それについての説明はここでは省略します。
骨盤矯正を手技で行なう場合、側臥位(横向きで寝てもらう)で仙腸関節の上後腸骨棘(PSIS)もしくは下後腸骨棘(PIIS:位置はPSISの下方4~5cmの所)にコンタクトして矯正(アジャスト)します。トムソンテーブル(ドロップテーブルともいう)で矯正する場合は、うつ伏せで施術を行ないます。コンタクトする場所は同じで、ベッドがガシャン!と音を立てたときに矯正が完了します。その他にもいろいろな矯正テクニックがありますが、どのテクニックを用いるかはその治療家しだいですね。
まとめ
- 骨盤の左右の骨(寛骨)が前傾・後傾して骨盤のねじれが発生する
- 骨盤のねじれで脚の長さの違いが現れる
- 寛骨の後傾した側の脚は短く見える
- 寛骨の前傾した側の脚は長く見える
- 脚の短い方に骨盤が傾く
- 仙腸関節を矯正(アジャスト)してゆがみを整える
- 骨盤のねじれと共に仙骨を矯正する必要があるケースもあり
- 骨盤は動かないとする考え方もあるが、実際は仙腸関節も恥骨結合も動く
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