産後の骨盤の開きについての疑問を解消!
産後の骨盤矯正を受けに来られた患者さんに、「骨盤の開きが気になる」とよく言われます。妊娠中~産後にかけてリラキシンというホルモンの影響で全身の関節がゆるくなり、大きい関節が5ヶ所もある骨盤は不安定な感覚が特に強く感じられる場所でしょう。
産後も続くこのゆるくて不安定な感覚と、妊娠前に履いていたズボンなどが履けなくなったという事実から、「骨盤が開いてしまった」と感じてしまうのは無理もありません。
さて、骨盤の関節の靭帯が出産時に伸びてしまい、本当に開いてしまうとかなり痛くて自分で歩いてくることもままならない事が多いのですが、実際に当院へ来院される患者さんは痛いと言いながら普通に自力で歩いてこられますね~。
この骨盤の開きには「見た目上の開き」と、「本当の開き」の二種類がありますので、それらについて説明していきます。
骨盤の前傾と後傾について
骨盤は複雑な動きをする複合体ですが、まずは真横から見た前傾と後傾の動きについて見てみましょう。上の図の中央がまっすぐ普通に立っているニュートラルな状態です。
骨盤の前傾
図の左側の骨盤が前傾した状態を見ると、腰の前の出っ張り部分がさらに前へ突き出るようになり、お尻側は逆に後ろへ出っ張るようになります。この形になると「以前履いていたズボンが引っかかって入りづらい」状態ですね。
さらに骨盤の上にある腰椎のカーブを見てください。骨盤が前傾すると上半身がそのままおじぎをするように前へ傾いてしまうため、バランスを維持するために「反り腰」が発生します。これはハイヒールを履いた時と同じ状態でもあります。
妊娠中は腹筋が使えなくなり、お腹の赤ちゃんが大きくなるにつれ重心が前に移動して骨盤が前傾し、さらに腰の背筋を使ってお腹を支えようとしてしまうので、どうしても反り腰になってしまいます。産後すぐには腹筋も復活しないため、この骨盤前傾と反り腰の組み合わせが残ることがほとんどですね。だいたい運動不足と抱っこの合わせ技で反り腰が慢性化します。そして、太ももの前側の筋肉、大腿四頭筋が張っていて、脚の付け根の前側や膝の上あたりが痛くなっている人も多いです。
脚の長さの左右差について
ここではあまり細かく触れませんが、骨盤前傾と後傾が左右で互い違いに起こると、それは骨盤のねじれであり、妊娠中、産後、男女年齢問わず、誰にでも起こります。骨盤前傾側では股関節が下に押し下げられるため、脚が長く見えます。骨が伸びるわけではありません。それに対して骨盤後傾側では股関節が上に引っ張られるため、脚が短くなったように見えます。脚の長さの違いについての詳細な解説はこちら。
骨盤の後傾
図の右側が骨盤の後傾した状態です。妊婦さんや産後すぐの方でこの状態の人を見たことはありません。腰椎椎間板ヘルニア気味の患者さんに多いパターンです。そして、座っているときにいつも浅く腰掛けていて、腰・背中がいつも丸まってしまう人に多いですね。骨盤前傾とは逆で、お尻が下がって見えます。太ももの裏側にあるハムストリングも固く張っていて、膝の後ろや殿部の座骨周辺が痛い人が多いです。
骨盤が開いていると感じてしまう状態は「骨盤前傾」なのですが、どうしてなのかちょっと見てみましょう。
骨盤が前傾すると出っ張って引っかかる所が増える
さて、普通に両手を腰に当ててみてください。両脚の付け根の上、人差し指や中指の当たる所に骨の出っ張りがあると思います。それが上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)という部位ですが、舌を噛みそうな名前なので普通はASISと呼びます。骨盤の腸骨が上から見るとハの字に広がっているため、骨盤が前傾するとこのASISが外側に広がりながら前方へ突き出てくる状態になります。股関節を挟んで反対側の座骨は後ろ側に回るため、お尻の肉が後ろへ突き出る形になります。通常のニュートラルな状態と比べて、この赤丸とお尻が出っ張る状態ですね。
外観上、骨盤が広がったように見えてしまうこの「骨盤前傾」が、いわゆる産後の骨盤の開きの大部分を占めています。本当に開いたわけではありません。
本当に骨盤が開くこともある
骨盤が前傾すると見た目上、広がった様に見えてしまうのに対して、本当に広がってしまう場合もまれにあります。本当に開いてしまう場合、離開が発生する場所は3ヶ所のみです。それは股間のちょい上にある恥骨結合と、後ろ側にある左右の仙腸関節です。3ヶ所とも通常は靭帯にガッチリとガードされていて動きは小さいのですが、妊娠してリラキシンというホルモンが分泌されるようになると靭帯がゆるんで動きが大きくなります。
妊娠中に上記の様な恥骨結合離開や仙腸関節も含めた骨盤離開が起こることはまずないものの、自然分娩で赤ちゃんが産道を通る時、恥骨結合や仙腸関節の靭帯を伸ばしてしまって痛めることがたまにあります。
恥骨と恥骨の間には軟骨が挟まっていて、前と後ろから靭帯で固定されています。この恥骨結合をグイッと伸ばしてしまうと上図のような恥骨結合離開と呼ばれる状態になります。捻挫と同じような状態なので、、、痛いです。恥骨結合は歩行時にねじれの力が加わる部位なので、特に歩く時に痛いでしょう。
そして妊娠前から骨盤のねじれのゆがみが強かった場合、恥骨結合離開が起きた時にさらに段差が発生することもあります。この場合は後ろ側の仙腸関節のゆがみも痛みの原因となるでしょう。
まとめ
- 骨盤の開きとは骨盤の前傾。
- 骨盤が前傾すると出っ張りが増える。
- 骨盤の出っ張りが増えると、骨盤が開いたように感じる。
- 骨盤が本当に開くことはあまりない。
- 骨盤前傾と反り腰のクセがついたままだと腰痛などが慢性化するので産後半年以内に骨盤矯正を受けておきましょう。
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