起立性調節障害・直立性不耐症の原因

朝起きられない・起立性調節障害の原因
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朝なかなか起きられない、立ちくらみやめまいがするなど、起立性調節障害(OD)の症状はなぜ起こるのでしょうか?

起立性調節障害(OD)がある人は、身体全体の機能やバランスを整える自律神経の働きが低下しているからです。自律神経は交感神経と副交感神経の2系統に分かれていて、心臓や脳や全身への血液の循環、胃腸など消化器官のはたらき、体温の調節、ホルモンの分泌の調節、睡眠と覚醒のコントロールなどを司っています。自律神経の乱れがあると、普段はこうした無意識に行われる身体のコントロールがうまくいかなくなってしまうのです。

その中でも起立性調節障害の症状でとりわけ問題となるのが、上半身を起こしたり、立ち上がった時に脳への血流が低下することです。正常な場合、急に立ち上がっても脳への血流を確保するように自律神経が働いてくれるのですが、主に心臓や血管をコントロールしている自律神経のバランスが乱れていると、脳への血流を保てなくなってしまいます。その結果、立ちくらみやめまいという代表的な症状が発生し、脳の活動が低下してしまうのです。特に学校へ通っている小中学生や高校生にとって、記憶力や集中力の低下は「勉強が手につかない、授業の内容が全然頭に入らない」ことにつながります。

脳への血流が低下しているかどうか検査する方法

起立性調節障害の疑いが強く、エビデンスとともに診断を確定したい時、医療機関ではヘッドアップチルトテストと能動的起立テストの2つをおこなうでしょう。これらの検査を受けることで、起立時に脳への血流が減少していることを客観的に測定できます。

ヘッドアップチルトテスト

ヘッドアップチルト試験

医療機関によるとは思いますが、血圧計・心電図・パルスオキシメーター(脳オキシメーターの方がベター)を装着してチルトテーブルに身体を固定し、テーブルを立ち上がらせることで、起立時の血圧・心拍数・脳の酸素飽和度の変化を測定・記録します。

能動的起立テスト

能動的起立試験

ヘッドアップチルトテストで使用した測定器具を装着したまま、今度は自分の力で起立してもらいます。起立性調節障害による立ちくらみやめまいなどの原因が、血圧・心拍数・脳の血流の変化によるものだと自分の目で確認できます。

脳の血流を自宅で調べるのは難しいですが、血圧や心拍数は家庭用の血圧計で測定できますので、この能動的起立テストを真似して、毎朝決まった時間に起き上がる前と起立時に測定してみると変化に気付けるかもしれません。

起立性調節障害の大きな原因の一つである背骨のゆがみを改善

正常であれば、寝ている状態から急に上半身を起こしたり立ち上がったりしても特に問題は起こりません。自律神経がバランスよく働いていると下半身に血液が滞りすぎないよう調節してくれるのですが、起立性調節障害の患者さんだとそれが出来ていません。そんな患者さんの背骨をチェックしてみると、だいたい首の上の方と肩甲骨の間にゆがみがあります。

副交感神経が優位になっている場合

副交感神経(迷走神経)

首の上の方、つまり第1~第2頚椎 (C1・C2)にゆがみがあると、脳幹から出てきた副交感神経の一つである「迷走神経(Vagus Nerve)」が刺激を受けやすくなります。迷走神経はあちこちで分岐しながら複雑な経路を辿って胸部や腹部の臓器につながっていて、もちろん心臓にも接続しています。この迷走神経がC1・C2付近で刺激を受けるとどんな反応が起きるかというと、心拍数が減少して血圧が下がり、血管が拡張します。気道は収縮して呼吸が浅くなり、アドレナリンの分泌が抑えられて血管の収縮が抑制されます。要は身体がリラックスしてボーッとした力の入らない状態になるということですね。おまけの話ですが、迷走神経の一部は外耳に接続しているので、他人に耳掃除をしてもらうと迷走神経が直接刺激されることになり、身体がすごくリラックスして眠くなります。それと同じことです。

交感神経が優位になっている場合

そして背中の上の方、第1~第4胸椎 (T1~T4)の辺りから出てくる神経が構成する交感神経は主に心臓をコントロールしていて、副交感神経とは正反対のはたらきをおこないます。T1~T4付近のゆがみのせいで心臓の働きをコントロールしている交感神経が刺激を受けると、心拍数や心臓の収縮力が上がって血圧が高くなります。

背骨のゆがみや首のコリを和らげて自律神経のバランスを整える

胸鎖乳突筋と迷走神経の位置関係

起立性調節障害で基本的に着目したいのは迷走神経の方で、首の上の方にある第1~第2頚椎のゆがみはもちろんのこと、首の横にある「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」という筋肉の影響も強く受けます。例えば姿勢の悪さなどでこの胸鎖乳突筋が固くなりすぎていると、そのすぐ後ろを走る迷走神経が刺激を受けすぎて副交感神経優位になりやすいのです。

胸鎖乳突筋のマッサージ

上部頸椎のゆがみを整えながら、胸鎖乳突筋など迷走神経に影響をあたえやすい筋肉の緊張をほぐすことで、朝なかなか起きられない・立ちくらみやめまいがする・身体がだるい、といった副交感神経優位な状態を調節することができます。

実際には猫背などの姿勢の悪さがあれば胸椎の方にもゆがみがあり、交感神経の方も刺激されていることが多いため、首と背中を同時に調整することになると思います。頚椎や胸椎のゆがみをアジャストし、筋肉の緊張を和らげることで自律神経のバランスを整えます。ゆがみを整えることで、交感神経と副交感神経の両方の自律神経が必要以上に活動している状態を抑えるということですね。

起立性調節障害のサブタイプに応じて頚椎と胸椎をアジャスト

そして起立性調節障害の症状にはさまざまなサブタイプが存在することが知られており、その原因は交感神経と副交感神経が胸椎と頚椎のゆがみ、および首の筋肉の過緊張の度合いによって変化するのかもしれません。

例えばPOTS (Postural Tachycardia Syndrome:体位性頻脈症候群)という、起立時に血圧が下がらず、心拍数が極端に増加するサブタイプがあるのですが、これはカイロプラクティック的な考え方からすると、背中の上の方の胸椎 (T1~T4)あたりのゆがみが大きく関わっていそうです。よってこのサブタイプのケースでは、起立性調節障害の主な原因は背骨のゆがみにあると考えて、首肩周りの筋肉の緊張をほぐし、上部頸椎と肩甲骨の間の胸椎を矯正することで自律神経の働きのバランスを整えつつ治療を進めてゆきます。

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