腰痛など痛みの治療ガイドラインに変化

腰痛

年齢性別問わず多くの方が悩む腰痛など痛みの治療法のガイドラインに変化が現れたという話です。

アメリカでのリサーチによると、生涯で腰痛を経験したことの無い人は2割ほどにすぎないそうです1
2割もいるのかと思ってしまいますが、それは私の職業のせいですね。腰痛で医療機関を受診する患者さんの数は年間を通してみると、呼吸器疾患(カゼなど)で受診する方の次に多いようです2

急性の腰痛はひどいとギックリ腰と呼ばれますが、大体のケースにおいて痛みの度合いは数日から数週間で改善していきます。慢性化してなかなか治らない腰痛は急性のものと比べるとやっかいで、腰痛のせいでイライラしていると日常生活や仕事に大きな悪影響をもたらしがちです。身に覚えはありませんか?ついついイラついて声を張り上げてしまったり、何でもないような日常動作ができなくなって気分が落ち込んだり。そして友人・家族関係にも悪影響が波及してきます

これもアメリカの話ですが、通信・交通手段が昔と比べて格段に進歩してさらに家事・買い物などが楽になると体を動かすことが極端に減り、人口に占める肥満率が上昇するにつれて腰痛の有症率が上がっています。アメリカだと小児の肥満率もすごくて4、当然子供の腰痛も多いですね。

構造的、機能的に健康な背骨をキープすることは腰痛を予防するのに大切な事ですが、肉体的・精神的な健康、生活の質(Quality of Life) を維持するためにも健康な背骨は必要です。

食生活の改善、適度な運動、エルゴノミックで人間工学的に正しい職場環境(机やいすの高さ、キーボードやモニターの位置など)、肉体作業時の身体の動かし方の改善(要介護者の移動時や重量物を持ち運ぶ時など)をいつも意識することで、長い目で見ると背骨の機能や構造を維持、あるいは強化することができます。そしてそれは日常生活や仕事上のケガ、腰痛を防ぐことにつながります。

でもまあ普段いくら気を付けていても、腰痛ってふとした瞬間に来ますよね。軽めで鈍い感じの腰痛だったら、確かに我慢して日常生活で体を動かしているうちに改善したりしますが、ちょっとひどめのギックリ腰だったらどうしましょう?最近のレポートではブロック注射など薬物療法などに頼るよりも非侵襲的な治療法(例えばカイロプラクティックなどの手技療法)が強く推薦されています。

比較的最近まで、医療機関における腰痛の治療は鎮痛剤や湿布薬の処方、安静にすることを指示するだけで終わっていました。しかし2010年代に入ってから(もう少し前からかも)、まずは薬物療法に頼らない手技療法を選択することや、痛いからと行って安静にするのではなく出来るだけ今までどおり体をアクティブに動かすようにするといった治療方針を取ることが勧められています。

例えば米国内科学会(American College of Physicians)は2017年に腰痛治療のガイドラインを更新し5、腰痛治療に際してまずは鎮痛剤に頼らず非侵襲的な治療法(温熱療法・マッサージ・鍼灸・スパイナルマニピュレーション)を選択すべきだと述べています。スパイナルマニピュレーションとは脊椎矯正の意味で、カイロプラクティックのことですね。そしてもし薬物療法を選択する場合は非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンやアスピリン、バファリンなど)や筋弛緩剤を選択すべきだそうです。

また、2018年には米国のThe Joint Comission(医療施設認定合同機構)がやはり腰痛など痛みの治療の選択肢に少なくとも1つは上記のような非侵襲的な治療法を含めるべきだとしてガイドラインを更新しています。このThe Joint Comission には順天堂大学医学部付属の順天堂医院も参加しているようですね。

薬物療法を避けて非侵襲的な治療法を用いるようにガイドラインを更新している理由としては、医療用麻薬(オピオイド鎮痛剤)の使用を出来るだけ抑えたいという考えがあるようです。鎮痛剤を常用すると体が慣れてしまいオーバードーズしがちなだけでなく、腰痛などの本当の原因を隠してしまったり、本当の問題が隠れているのに体を無理に動かしすぎてかえって痛みの原因が増悪するからです。

アメリカでは医療用麻薬など強い鎮痛剤の利用に伴うコスト増が問題になっており、そのためカイロプラクティックなど非侵襲的な手技療法の組み合わせの方が費用対効果に優れているということが認められつつあります6

もしあなたが腰痛にお悩みで、病院に行っても湿布薬や鎮痛剤を渡されるだけで済まされている場合、それは時代遅れな治療法です。かといってもみほぐすだけのマッサージ店やストレッチだけのストレッチ店に行っても、筋骨格の土台である背骨や骨盤の調整はうまく出来ませんので当院のようなカイロプラクティック専門の治療院をご利用下さい。

参照:

1. Rubin Dl. Epidemiology and Risk Factors for Spine Pain. Neurol Clin, 2007; May;25(2):353-71.

2. Hart LG, et al. Physician Office Visits for Low Back Pain: Frequency, Clinical Evaluation, and Treatment Patterns from a U.S. National Survey. Spine, 1995; 20:11–9.

3. GBD 2015 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 310 diseases and injuries, 1990–2015: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. The Lancet. 2016 Oct 7; 388:1545–1602.

4. Fryar CD, Carroll MD, Ogden CL. Prevalence of overweight and obesity among children and adolescents: United States, 1963-1965 through 2011-2012. Health E-Stats. 2014. https://www.cdc.gov/nchs/data/hestat/obesity_child_11_12/obesity_child_11_12.htm.

5. Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA. Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Ann Intern Med. ;166:514–530. doi: 10.7326/M16-2367

6. Keeney et al. Early Predictors of Lumbar Spine Surgery after Occupational Back Injury: Results from a Prospective Study of Workers in Washington State. Spine, 2013; 38(11):953- 964.

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